UCLA西村一郎教授講演会 歯周病を,いま一度考える Periodentitis. Who, When, Why, How, Any cure?

2016年9月27日(火),庭のホテル東京にてITDN-Tokyo歯周病勉強会が行われた. 今回の講演会はUCLA歯学部教授 西村一郎先生を迎えて,メタアナライシスや最近の論文などを元に,現在行われている歯周病に対するアプローチの是非や,今後の展開を占う内容であった.その内容や切り口に,会場にいる医療従事者の誰もが驚いたに違いない.

 統計から得られた歯周病の病態についての説明後,こんな意外な言葉から本題に入る. 「Barrier Tissueとしての口腔粘膜を考えてみる」である.

 日常臨床で,歯の喪失後の顎堤吸収が個人によってかなり違うことを経験しないだろうか? 西村教授は,その解明のために免疫細胞である線維芽細胞の,“ある働き=コラーゲン収縮”に注目している.なぜか? 顎堤吸収に至るには,まず歯肉結合組織の線維が反応し,その創傷治癒過程で,口腔粘膜組織の過度な収縮力を受けるからだ.しかし,なかにはその収縮が強いものと弱いものがいる.その場合では,顎堤吸収にも大きな差かあるというのだ.その違いはどこから来るのか? その答えは歯肉収縮型遺伝子である Fibroblast Growth Factor Receptor 1 Oncogene Partner 2/Wound Inducible Transcript-3.0(以下. wit3.0)に よるところが大きいと西村教授の研究グループによって明らかになった.講演はここからヒトゲノムや人類の祖先のネアンデルタール人やクロマニョン人についてまで話が及ぶのだが,この収縮力=顎堤吸収の差の正体はwit 3.0 活動の程度によるもので,それを利用すればポケットの深さのコントロールや顎堤の吸収の防止など治療法となる. 歯周病には,もうーつ大事なフアクタ一がある. それは年齢である.年齢のなかでターニングポイントと考えられるのが50歳頃のことで, DNAの不完全な修復によって老化という現象が起きる.このDNAの修復が不完全であると,炎症だけではなく,老化やアポトーシスが待ち受ける.もちろん,ここにも老化しやすいが為に歯周痛が進行しやすいタイプというものが存在する.

 こういった点を踏まえると,われわれ人類は歯周病の進行具合や治癒過程に遺伝子の影響を受けていることになる. そこで,遣伝子診断か可能となると,個別化された治療もしくは予防プログラムへと発展する. つまリ,自分自身が歯槽骨や顎堤か吸収しやすいタイプだとわかれば,綿維芽細胞の収縮力が強くならないプログラムを取り入れ,そうすると管理は増えるかもしれないが, ブラッシングなどのセルフケアは単純化できるのではないたろうか?

 歯科ではプロフェッショナルケアが確立されておリ,ポケット形成から重度歯周病への防止を行ってきたノウハウには長年の蓄積がある.今後はさらに,パーソナライズドケアの時代となるであろう.それも遺伝子の情報を元に.

芝崎龍典

愛知県 浅見矯正歯科, ITDN会員

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