2017年12月17日㈰、標記がITDN-Tokyo主催にて東京国際フォーラムにおいて行われた。赤松正先生(東海大形成外科教授)、吉成正雄先生(東歯大歯科教授)、芝崎龍典先生(名古屋市開業)に御講演いただいた。
赤松先生からは「顎顔面外科と審美」「顔面骨とインプラント」と題してお話いただいた。頭蓋顎顔面外科では、機能と同時に審美性も求められ、ご紹介いただいた口唇裂のZ字弁法形成術から先天性疾患の頭蓋骨縫合早期癒合症の拡張手術までの様々な症例と繊細で的確な治療内容は歯科医師にとって驚きであった。特に興味深かったのは、顔面組織欠損に対する顎顔面インプラント維持型エピテーゼについてだ。眼窩部等に埋入された荷重の少ないインプラントは、その皮膚周囲に炎症をきたすことがあるものの、長期的喪失率は高くなく喪失したのは埋入部位が放射線治療の照射範囲内である場合であったとの報告であった。またインプラント周囲炎とその喪失には、力学的および細菌学的因子の相関があると改めて実感した。最後に開閉瞼動作を付与したエピテーゼの研究から「不気味の谷」の関係性にまで広がり、会場を大いに沸かせた。
吉成先生からは「インプラント周囲骨の応力反応」についてお話いただいた。最近、AlbrektssonらはMarginal bone loss≠Peri implantitisとの内容の報告をしている。先生はオッセオインテグレーションとはインプラントを被包化する一種の異物反応(foreign body reaction)で、平衡状態においてはこれを持続するが、何らかの刺激を受けるとprovoked異物反応が起こり、インプラント周囲骨吸収を発症するとした。メカノスタット理論からみたひずみの大きさと骨の応答から当題を評価する話や、インプラントと骨の弾性係数の差で生まれる残留応力によって生じる、ストレスシールディングの問題について御解説いただいた。垂直荷重をかけたときの応力分布は有限要素解析によるとインプラント頸部に集中しており、圧縮応力に関しては当グループ代表の加藤英治先生による研究でも、生体と同解析よりインプラント頸部に同心円で皿状の力の到達と骨吸収を認めたとしている。インプラントの長期安定ために、非常に重要な講演であった。
芝崎先生からは「インプラント長期安定に寄与する矯正はあるか」についてお話しいただいた。これについて先生は1.補綴治療や抜歯対象歯とその支持組織を把握し安易な小臼歯抜歯を止める。2.歯周疾患に至る開咬や過蓋咬合の治療は積極的な下顎骨の回転を行い、不適切な咬合力を排除する。3.顎変形症患者以外にも顎口腔周囲筋機能検査を行い治療(MFT等)に応用する。この3つが重要であるとお話された。驚いたことに先生の症例にて、下顎骨の回転にて臼歯部に適正な咬合を付与した時、術前よりも咬筋の力が弱まった結果が得られ、しかしながら右左の力差は減少し安定を得られたとの報告があった。インプラント治療における咬合の安定は非常に重要であり、今後も矯正科との連携をより深める必要があると感じさせられた。
最後は企業や研究者なども交わり活発なディスカッションが行われ、大盛況のうちに幕を閉じた。私は本講演会で様々な情報を吸収できた体験が、まるで一流レストランのコース料理を完食した時の満足感に近いものに感じた。真理への探究がつづく本会の今後が非常に楽しみである。
柴田典信 Norinobu Shibata ITDN会員、千葉県 みなとデンタルクリニック