2009年のノーベル化学賞を受賞した著者は、「死に対する原始的な恐怖に付け込んでいる」と、テック長者が主導する抗老化研究に眉をひそめる。
100歳以上の人は、80歳を境に以下の3つのパターンに分けられるとされる。
- 生存者:80歳前に加齢疾患に罹患(38%)
- 遅延者:加齢疾患に80歳以降に罹患(43%)
- 逃走者:100歳まで未罹患(19%) ※1
天災、貧困、戦争、パンデミックなどの歴史的統計を除外すると、120歳くらいが人の最高寿命と著者は考えている。フレンチ・パラドックス※2でもて囃されたサーチュイン遺伝子のレスベラトロールの結果は、どうも雲行きが怪しい。次にメトホルミン(糖尿病治療薬)と、線虫では注目されたが、マウスでは高濃度では短命に、低濃度では長寿化させたが、人ではまだ不明である。
そして、イースター島(ラパ・イ)の土壌のストレプトマイセス・ハイグロスコピクスが作るラパマイシンは、1987年に免疫抑制剤の認可を得た。この標的となるTORは、成体の細胞分裂にも存在し、この阻害はカロリー制限と同じ抗老化作用を持つことが偶然発見され、マウスでは延命効果が確認される。
…でもご用心!暴飲暴食の免罪符的サプリは不老不死の秘薬ならず。
脚注
※1: 生存者(80歳前に加齢疾患に罹患38%)、遅延者(10大疾患に80歳以降に罹患43%)、逃走者(100歳まで未罹患19%)
※2: フランス人の心疾患率が低いのは、ワインに含まれるレスベラトロール(ポリフェノールの1種)摂取が要因との仮説があるが、Nature(2011年9月22日;477(7365))では「寿命延長効果は再現性が乏しく、哺乳類では不明」とされている。
※3: TOR阻害薬は、カロリーを摂っていても細胞内オートファジーや免疫細胞を活性化する。成長期には有効でも、中年以降は老化抑制の鍵となる薬として期待されている。