2019/10/18 Fri. 18:00 – ワイム御茶ノ水 RoomD
四半世紀のティッシュエンジニアリングを再考する
講演要旨
四半世紀前に米国ボストンで誕生したティッシュエンジニアリング(組織工学)とは、細胞、活性因子、そして足場マトリクスを組み合わせることで組織再生するというコンセプトであった。口腔顎顔面組織の欠損は歯科領域では日常の問題であり、歯牙の再生など応用の範囲は広いと期待があった。しかしながら、分化能の大きい胚性幹細胞の使用や生体外での処理の課題など、解決しなくてはならない問題がまだある。日本では、 iPS 細胞を用いて組織分化するプロトコールが多数検討され、網膜、血小板、心筋シートなどの臨床治験が始まっている。
口腔顎顔面組織の機能回復を考えると、例えば、歯牙、歯槽骨といった硬組織に限らず、歯肉、歯根膜さらに表情筋や運動神経、感覚神経を含む複合組織から成立していると考える。このため、これまでの組織工学コンセプトから、複合組織エンジニアリングへのパラダイムシフトが必要と考えている。
2017 年、ノーベル医学生理学賞が体内時計の分子生物学的メカニズムの解明に授与された。体内時計は脳下垂体にあるsuprachiasmatic nuclei で生体ホメオスタシスを厳密に制御している。抹消組織、たとえば骨髄由来の間葉系ステムセルも独自の時計遺伝子を発現している。さらに、チタンインプラントのような環境因子が時計遺伝子発現に大きく影響することがわかった。体内時計は生体組織全てにあり、その制御メカニズムが各々の細胞分化に関与すると考えられている。ここで体内時計を対象にした
複合組織エンジニアリングを議論したい