書評

『亜種の起源』

苦しみは波のように

ON THE ORIGIN of SUBSPECIEIS

自然科学はコロナとAIで急速に変わった。

ダーヴィンの自然淘汰や生物機械論は通用しなくなる。
効率や合理的考えはAIが担い、人には、より感じることと多様(亜種)性が求められる。

−−−ハッチントン病など脳の神経疾患を治そうと企業研究室に入った著者、知られていないが神戸リサーチセンター時代に(山中伸弥教授の発表の3ヶ月前、2007年4月)、ヒトips細胞開発に成功し翌年に特許出願*1も成している。

幹細胞にvirus vectorを用いて遺伝子導入し初期化を試し、発生の初期環境を再生に応用するという発想を90年代に今は亡き旧友達*2から得た。

研究が頓挫しかけた頃、骨や骨髄を作る間葉系幹細胞は組織発生の垣根を超え分化するという知見がもたらされipsはできた。

成功の鍵は“細胞の初期化が転写因子だけではなく自己組織化という原理との同期で起こる”ことだ。

生命の多様性は、クローズな機械論でなく普遍な物理や化学法則との自発的パターンの振動子の同期*3で起こり、今後、生命進化はオープンシステムで研究されるべきだ、と説く。

* 1 係争を避けるため特許は現在、京都大学に譲渡されている。
*2 STAP細胞で渦中の2014年没の笹井芳樹氏から京大で神経幹細胞発生の転写因子の発想を2019年没の慶應大学准教授三好浩之よりvirus vectorによる遺伝子導入法を教示された。
*3メトロノームは、多数を各子振動させても最後には自然に同じリズムを刻んで同期する。

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