書評

『実力も運のうち 能力主義は正義か?』

2021年新年, ガラスを破り米国区議会へ暴徒が乱入する衝撃映像が流れた.※1

これは発展途上国の話ではなく, 戦後の日本がお手本にしてきた, 法と秩序, 自由と平等の国の話である.

 分断は根深い! グローバリゼーションの時代に, 不平等と賃金の停滞が労働者を襲った. 高学歴米国人の,労働者・黒人・貧困・肥満・低学歴といった人びとへの態度を調べた調査では, 教育水準の低い者への偏見が大きい. 出世・経済価値・名誉が合わされば, 人びとは狂乱して学歴を得ようとするが, 低所得家庭にその道は閉ざされている.

 2016年, ヒラリーとその大統領選では, 学位のない白人の2/3が, また同所得でも低学歴者ほど, トランプに投票している. 世襲と同じで, 米国の大学は, エリートで裕福な家の子しか通えない. 受験戦争を勝ち抜いた人の考えは, 他の階層には感謝の気持ちすら持っていない. だが, 入学には仲介者がいて, 大学好みの功績(メリット)※2を作りSAT※3もお金で買える, 米国激怒という話から本書は始まる.

ーそう! アメリカンドリーム※4は, もやはアメリカにはないのだ!

※1 米国議事堂をトランプ支持者が1月6日に襲撃.
※2 学力の他, レジェンド(同窓父兄・寄付者)枠やスポーツ奨学生(貧困層はバスケ・アメフトのみ,
他の種目は富裕層指定が独占)
※3 米国大学進学適性試験で知能指数(IQ)と相関がある.
※4 米国は経済的流動性が低く, 貧困を脱して富裕層になれる可能性がデンマークやカナダは高い.

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