本の厚みには圧倒されるが、化学は万物の百科事典、原子・電子・分子の結合の立体方向とその強さを人に喩えた初章を、サラッと(わからなくても)読めば、あとは化学オタクのケイト先生(表紙写真で火を噴いている人物)が「推し」について熱く語ってくれる。朝、目覚めのコーヒーを飲むときにカフェインが体内でどのように眠気を覚ます? コーヒーを美味しく入れるために湯を沸騰させてはいけない理由とは? シャワーを浴びるときに使うシャンプーの成分の機能を知ってる? じゃあ、日焼け止めを塗ることで紫外線を防げる理由とは?

梶山 あゆみ:訳
「私は何気ない会話をきりだす調子で化学の話をする癖がある。夫とデートの夜にノーベル賞を受賞した実験について語りあったこともあるし、周期表の元素はどれが最高かをめぐって激論になったことだってある(パラジウム1ですけどね、もちろん)」化学書に欠けていた生活感のあるウィットに富んだ内容で、高校時代、化学の授業で寝ていた我々の学び直しに朗報だ。――― 読むと、あなたも世の中を化学の目で見るようになる!!
※1 アセナフテニルNヘテロ環状カルベンーパラジウム(Ⅱ)錯体触媒といわれても何が何やらさっぱりだがこれは医薬品をつくる化学反応に必要な触媒の一種、価格高騰の一因でもある