書評

『ストーリーが世界を滅ぼす』

 皆さん知ってますか?「ストーリーから世界を救うにはどうしたらいいか」プラトンも「国家」※1 で警告しています「詩人を追放せよ」と!かつて物語は、集団を結束させ民族に道徳的規範をもたらし文明を築くのに一役を買った。だが近い将来それが文明を破壊するかもしれない。AIやSNSのような新しいテクノロジーが拡散する事実とフェイクを区別することはもはや不可能だ。人は善と悪という対立を描く短絡的なプロバカンダを受け入れがちだ。米国議会襲撃・ロシアのウクライナ侵攻などの情報操作は今や社会を分断している。

ジョナサン・ゴットシャル:著

優れた物語は注意を引くし、話さずにはいられない、そして強い感情を生み出す。敵役に憎しみを抱かせ人種虐殺(ジェノサイド)※2さえおこす!太古の口伝民話に始まり芸能、舞台、活字書籍、YouTube動画まで結末は異なるが道徳的な含みがあり危機を乗り越える主人公が登場する。末期癌の化学の高校教師が麻薬王になるTVシリーズ“Breaking Bad”でも“結局自業自得ってことさ〜!”と Baby bule※2が流れる中、皮肉な結末で終わる。本書で引用されている本や曲は思わず検索せずにはいられない!

※1 古代ギリシャの哲学書でソクラテスの語りを記録する対話篇の体裁をとる
※2 ルワンダのフツ族への虐殺やナチスのユダヤ人へのホロコーストなど
※3 2014年エミー賞作品(AMC局)最終話でバットフィンガーの1971年ヒット曲で終わる、登場する麻薬:ブルー・メスとかけている

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