書評

『ホールアースの革命家 スチュアート・ブランドの数奇な人生』

 20世紀の米国ではだれもが知る「ホールアースカタログ」*¹の編集者で、写真家でもあるブランド。カタログ表紙の、宇宙からの俯瞰的・地球(全地球的な通販カタログ)の思考は、1960年代の若者の羅針盤だった。テクノロジーを起爆させ、多くの起業・音楽・PC文化・環境保護・エコ生活・反戦運動の種も蒔いた。カタログ最終刊裏表紙の曲合道の写真は、Mac(i-Phone)の創始者ジョブズを「ハングリーであれ、愚かであれ!」²の言葉とともに熱く震撼させた!そしてブランドは、廃刊記念イベントで得た売上のうち2万ドルを、後のPC(パソコン)を勃興させたホームブリューコンピュータクラブ³の創設に使った。

この時代は知識を共有するとともに、巨大企業による管理社会を変えようと、革命家とも呼ぶべきハッカーたちが登場しつつあった。ブランドは、デジタル文化に関して「情報はフリー(自由、無料)になりたがっている」と、1984年のハッカー会議で発言し、バタフライ・エフェクト*⁴を与え続けた。

オタク文化ともなるなかれ!若者の心を熱がむすぶ力は、未来を変える力をある。

  • *¹:発明家バックミンスター・フラー(宇宙船地球号)の思想を取り入れた通販型図鑑。別冊や記事は、発行250万部で全米図書賞を受賞。
  • *²:ジョブズが2005年6月スタンフォード大学卒業への言葉、ホールアースカタログ最終刊の写真に添えられたフラーの名言!
  • *³:ジョブズ、ゲイツ、ポスニックらが関連。
  • *⁴:ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こす、のたとえ。最小が最大の効果を示す、フラーのダイマクション思想にも通じる。

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