『ダ・ヴィンチの右脳と左脳を科学する』

ベストセラー作家で自らも脳腫瘍で逝った外科医が手稿(ダヴィンチ・ノート)を手掛かりにした遺作『ダ・ヴィンチコード』(2006年映画)では絵画”最後の晩餐”に謎を込めた中世の天才.

彼はほとんどの人類(左脳優位 RHHM※)とは異なる右脳優位(速算,芸術,閃き,透視,創造,時空感覚)の持ち主だった. サバン症候群や脳梁切断などでは右脳が優位となり,言語的論理を排除し,突如天才的閃きが出現することがある. 先を行き過ぎた能力(遠近法,望遠鏡,写真,映像,飛行機,ヘリコプター,銃器,潜水服,俯瞰地図,人体解剖,天文)の具体化には近代の技術と500年の時が必要だった.

彼の脳が未来型なら高等生物の種の存続期間が約120万年とすると15万歳の人類はまだ12歳. 人類の進化はまだ途上で, 超人類は異星人並みの未知の脳力になる!?

※Right-Handed Heterosexual Males(右利き異性愛の男性)に対してダ・ヴィンチはESSP(左利き同性愛の男性).

『シンギュラリティ 人工知能から超知能へ』

シンギュラリティとは特異点を指し,数学者チューリング(映画 ImitationGameのモデル)はAI(人工知能)と人の解答が出題者見分けがつかなくなる日が20世紀末には来ると予測した.ムーアの法則では1つのチップに埋め込まれるトランジスタの数は18ヶ月で倍増し,21世紀半ばにトランスヒューマニズム(人超越)を迎えるという.

しかしそれには従来の方法を脱し,より脳を理解するために生体の記憶野をμマッピングし,回路を演算し,それを外部身体化=エミュレーション(記憶の外部コピー)することが必要だ.肉体が不要となれば自己の不死化も夢ではない.だが人並みではない超AIはSF映画などでも自我を覚醒する!! 

われわれの恵となるか天才棋士の連勝も阻む敵となるのか? ―それでも創らずにはいられないヒトの,未知の一手は?

『生命の閃光: 体は電気で動いている』

皆さん,最近ビビビッと来てますか? 生体は,(-)イオン(CI)と(+)イオン(Na, K, H)を駆使し,電気の役割はハイブリット車より大きい. 組織内にはKイオンが, 外にはNaイオンが多く,隔てる細胞膜にはチャネル(水路)が埋め込まれ, 濃度の高いほうから流れるイオンを水門のように制御する. 神経細胞の稲妻の速さのデジタル信号(インパルス)は, 終末でCaチャネルを開口させ,対岸の筋線維収縮の引き金を引く. その他の細胞でも個性的なチャネルがあり, その誤作動が疾病障害や毒薬による死をもたらしてきた. 著者は, 膵β細胞のKATPチャネル異常の新生児糖尿病の仕組みを解明して

服薬による治療法を臨床化した. 動物電気の発見者Gaivaniのみならず, 古代史から007の逸話まで織り込んだ, 電気仕掛けの生体の書.

UCLA西村一郎教授講演会 歯周病を,いま一度考える Periodentitis. Who, When, Why, How, Any cure?

2016年9月27日(火),庭のホテル東京にてITDN-Tokyo歯周病勉強会が行われた. 今回の講演会はUCLA歯学部教授 西村一郎先生を迎えて,メタアナライシスや最近の論文などを元に,現在行われている歯周病に対するアプローチの是非や,今後の展開を占う内容であった.その内容や切り口に,会場にいる医療従事者の誰もが驚いたに違いない.

 統計から得られた歯周病の病態についての説明後,こんな意外な言葉から本題に入る. 「Barrier Tissueとしての口腔粘膜を考えてみる」である.

 日常臨床で,歯の喪失後の顎堤吸収が個人によってかなり違うことを経験しないだろうか? 西村教授は,その解明のために免疫細胞である線維芽細胞の,“ある働き=コラーゲン収縮”に注目している.なぜか? 顎堤吸収に至るには,まず歯肉結合組織の線維が反応し,その創傷治癒過程で,口腔粘膜組織の過度な収縮力を受けるからだ.しかし,なかにはその収縮が強いものと弱いものがいる.その場合では,顎堤吸収にも大きな差かあるというのだ.その違いはどこから来るのか? その答えは歯肉収縮型遺伝子である Fibroblast Growth Factor Receptor 1 Oncogene Partner 2/Wound Inducible Transcript-3.0(以下. wit3.0)に よるところが大きいと西村教授の研究グループによって明らかになった.講演はここからヒトゲノムや人類の祖先のネアンデルタール人やクロマニョン人についてまで話が及ぶのだが,この収縮力=顎堤吸収の差の正体はwit 3.0 活動の程度によるもので,それを利用すればポケットの深さのコントロールや顎堤の吸収の防止など治療法となる. 歯周病には,もうーつ大事なフアクタ一がある. それは年齢である.年齢のなかでターニングポイントと考えられるのが50歳頃のことで, DNAの不完全な修復によって老化という現象が起きる.このDNAの修復が不完全であると,炎症だけではなく,老化やアポトーシスが待ち受ける.もちろん,ここにも老化しやすいが為に歯周痛が進行しやすいタイプというものが存在する.

 こういった点を踏まえると,われわれ人類は歯周病の進行具合や治癒過程に遺伝子の影響を受けていることになる. そこで,遣伝子診断か可能となると,個別化された治療もしくは予防プログラムへと発展する. つまリ,自分自身が歯槽骨や顎堤か吸収しやすいタイプだとわかれば,綿維芽細胞の収縮力が強くならないプログラムを取り入れ,そうすると管理は増えるかもしれないが, ブラッシングなどのセルフケアは単純化できるのではないたろうか?

 歯科ではプロフェッショナルケアが確立されておリ,ポケット形成から重度歯周病への防止を行ってきたノウハウには長年の蓄積がある.今後はさらに,パーソナライズドケアの時代となるであろう.それも遺伝子の情報を元に.

芝崎龍典

愛知県 浅見矯正歯科, ITDN会員

ITDN-Tokyo「インプラント周囲骨吸収の発生機序」

 2016年12月18日(日), 年末恒例のITDN-Tokyo(代表:加藤英治先生・目黒区開業)講演会が「インプラント周囲骨吸収の発生機序」をメインテーマに,前明海大学歯学部歯周病学 講座教授宮田隆先生を講師にお招きし, 東京国際フォーラム会議室にて関催された. インプラント周囲炎が一部社会問題となっているが,対処法のみならずその発症機序はいまだ明らかではない.

 歴史的にはMombelliらが1980生代後半に「インブラント周囲組職に歯周病と酷似した病態を示す炎症性の組繊破壊」をPeri-Implantitis(インプラント周囲炎)と命名したことに始まるといわれるが,当時は機能後の管理の仕方,メインテナンス法などはまだ議論されてはいなかった.

 1998年からJournal of & Maxil-lofacial Implantに掲載されたMiyata らによる一連の論文-The Influence of Controlled Occlusal Overload on Peri-implant Tissue」はosseointegrationの崩壊と咳合の関与を具体的に論じたものとして今日でも全世界て多く引用される論文のーつである.

 今後増加傾向にあるインプラント周囲炎の社会への負の影響ははかリしれなく,論文の著者・宮田先生に直接お話をうかがうことは会の念願でもあった.炎症と力の両面からインプラント周囲骨吸収の機序を解明していくことは歯科医の社会的責務である. 本講演では,午前の部においてまず代表の加藤が「そこが聞きたい骨吸収!」と題し,特異な環境を有する歯科インプラントの粘膜貫通部について1.初期治癒期の軟組織の生物学的幅径獲得説による骨高径決定,2.治癒後のインプラント頚部応力集中による骨への力学的負荷の2点を,貫通部の骨吸収のKeypointとし,近年研究が進むアルカリヒート(AH) 処理によるチタン表面によるソフトティシュ・インテクレーションの可能性を示すことで,当日の主旨を提示された.

 次に,会員代表として筆者が「唆合と骨組織変化」のテーマで,有限要素解析によるインプラント周囲骨の応力解析結果を示すと同時に, ノカノセンサーとして注目される骨細胞による骨 増生と吸収のメカニズムを下顎隆起や 根分岐部病変なとの臨床所見と比較し.発表した. それを受ける形で午後の部では宮田 氏が,カニクイザルを用いた一連の研究の意図するところを苦労話を交えながら楽しく解説され,また.インプラントが埋入された海綿骨を渇たす骨髄液の力学的挙動に着目し,メカニカル ストレスによる血管内皮細胞の変化と単球系の遊走が周囲炎発生の機序に関与するという仮説を提示し,会場を沸かせた.

 最後は企業研究者や大学関係者も交え,1日を総括する討論が活発に行われコメンテイターとして参加された 東京歯科大学教授吉成正雄先生から 「今後の研究に新しい示竣を与えた有意義な1 日とのご感想をいただき, 盛会に幕を閉じた.本講演会がインプラント周囲炎の発生機序の解明への大きな一歩になったであろうことは間違いない.

吉野晃

東京都:吉野デンタルクリニック

『微生物が地球をつくった -生命40億年史の主人公-』

現在の多細胞生物はすべての材料(Cell Staff)や動力源(ミトコンドリアや葉緑体)、細胞接着、公共機能(微生物群落のクオラムセンシングから)等の仕組みを微生物から拝借して進化している。古細菌、細菌やウィルスは、遺伝子の水平伝播により素早く変化に対応し地球創始期の環境さえ変えた。24億年前シアノバクテリアは酸素を生み出し大気にオゾン層を形成し有害紫外線をカットした。02濃度上昇によるCO2やメタンなど温室効果ガス減少で全球凍結が起こった。火山活動などで再度気温が上がった際、氷河などが地中のリンを削り出し海水中リン濃度を上げ、これを利用し(核酸、骨格、ATP等)生命の多様性大爆発が起った。微生物は死後も地中深くエネルギーを蓄え、地球環境~ヒトの腸内細菌まで、今も我々を支配し続けている!

『カルチャロミクス 文化をビッグデータで計測する』

知財の保存は古く先史代,羊飼いが小石(計算calculs:歯石の語源)を用いて頭数を記録(アーカイブ)したのに遡る,石窟壁画の象形は文字となり,書籍や新聞など,現在までに膨大なデータとなった.著者らはすべての図書館蔵書を自動スキャンし,電子化する計画を立てた.

当初,著作権や個人情報問題で危ぶまれたが,”言葉”の出現頻度と歴史軸情報だけで人類文化を可視的に分析した論文が2010年Science誌に掲載され,同時にそのデータはGoogleで公開された,受験英語の不規則同士は規則化されつつあり,有名人(クリントンやBeatles)名の出現率には半減期がある.事件や戦争などの負の集団記憶には忘却曲線がある.逆に脳磁計を用いて記憶を外部化し,死後も自己保存をめざすSF張りの構想もある.エッ! あなたのそのひと言もBig Data?

『ヒトラーの科学者たち』

2つの世界大戦はドイツ最高峰の科学者たちを翻弄した.

ロンドン空襲のV2ミサイル開発のファン・ブラウンはユダヤ人虐待の汚名を背負い戦後米国に帰化し,アポロ・ロケットを月に導いた.一方,アインシュタインに天才と評されたハーバー(ノーベル賞受賞)は,毒ガス兵器開発で妻(初の女性博士)を自殺に追いやり,ユダヤ人排斥で研究所を追われ,自ら開発したチクロンBは600万の同胞の命を奪った.

また排斥された多くの学者は米国で原爆開発に協力した.現代科学はパトロン(科研費請求しかり)に異様に依存的である.ニュートリノが注目の日本だが,ブレずにいかないと科学も道を誤る. 負の歴史もあるが闇に目を向けてこそ見える光もある!

「インプラントにおける治癒の病理」講演会

2014年12月21日(日)表記がITDN-Tokyo主催(東京国際フォーラム)にて行われた.「新編治癒の病理」(2011),「やさしい治癒のしくみとはたらき」(2013)著者の下野正基(東歯大名誉教授)先生にインプラント臨床の疑問に答えて頂いた. 

 講演に先立つ打ち合わせにて“貴君(きみ)がボケで私が突っ込む漫才調でやりましょう~!?”と,ご提案を受けた.“ボケる“のは得意なので早速,前振りの症例を探し始めた.

–閑話休題–(–それはさておき–),本会では, 1.顎骨内病変(根尖病変・エナメル上皮腫など)の発生機序と骨内欠損の治癒.2.咬合力とインプラント周囲骨組織として,過度な力が歯周組織に及ぼす変化について.3.インプラントと天然歯周囲組織の防御力の違いなどについて解説された.

⒈ではまず筆者がエナメル上皮腫区域切除後再建移植された腸骨にインプラント埋入した長期経過例と,嚢胞摘出や歯根端切除の骨治癒経過例を供覧し,下野先生にその発生機序と鑑別法,適切な処置と治癒機転を解説頂いた.

2.の力が歯周組織に及ぼす変化については、吉野晃先生(東京都北区開業)が骨は進化の過程で生命が揚陸した際の重力に耐えるためや,免疫機構内包のため役割が多様化した経緯を述べ,力とインプラントの関係について質問された.

3.では先の下顎骨区域切除移植骨症例では歯槽固有粘膜は無く口腔粘膜から直接アバットメントが貫通していることを示し,この部の治癒の機序や,天然歯周囲軟組織とインプラント周囲軟組織の付着の違いについて解説頂いた.

 インプラント周囲上皮の弱点として,内側上皮は非角化上皮から成るので天然歯付着上皮より3倍も遅いターンオーバーであること.CEJが欠如しており接着タンパクは一部のみの発現で弱く,インプラント周囲上皮には歯肉血管叢はみられず,従って歯肉溝滲出液による防御機構も期待できない.歯槽上線維群も部分欠如しており機械的障壁が低いなど.

 また初期の骨吸収(皿状骨欠損)原因として,歯根膜が無く炎症・免疫応答が遅く防御が弱いためや,CEJがないため上皮先端の位置が骨頂の位置によって決まり生物学的幅径にも不利なこと,過度な応力については,矯正治療の知見から穿下性骨吸収(内部骨吸収)により血管のないインプラント周囲骨側からでなく,血管の多い(破骨細胞は循環血液の単球から分化する)骨髄側から短時間で広範囲な吸収を起こすなどが挙げられた.

----恩師である下野先生に講演を依頼するにあたり大学の友達に,その人となりをリサーチした.1. 一流の研究者で紳士である.2. 留学先がミラノでイタリア通.3. 北海道出身のワンゲルOBで日本100名山のうち過半数以上を登破.なるほど!と思わせる反面,自筆の挿絵(シモノ画伯作)を本講演のため,わざわざ画材屋で絵筆を調達して描いていただいた大作を多用しての解説は,我々素人の脳みそに少しでも記憶を残し,今後のヒントを与えたいというパッションを感じた.“ボケる”どころか,講演後も暫くプッチーニの“誰も寝てはならぬ!”が私の頭の中で鳴り続いていた----

『6度目の大絶滅』

米国自然史博物館の足元プレートにこうある.”地球規模の気候変動により種の大絶滅に5度遭遇した”.そのたび役者が総入れ替えになった舞台のように繁栄生物が変わった.最後は白亜紀末に起き,その地層のイリジウムの多さから地球外物体の衝突説が1980年代に認められた.”人類の出アフリカ”により6度目がすでに起動している・・・! 

人の分布にともない,両生類の大半の種が絶滅し,鳥類,大型哺乳類の乱獲(繁殖と成体への期間が長いため),果てはネアンデルタール人に至るまで(4%のDNA痕跡をわれわれの遺伝子に残し)絶滅に追いやった. 生命進化樹頂点の人類, 温暖化や環境破壊により今, 自らの枝まで切り落そうとしている!?